mouratta’s blog

うっかり半世紀生きてきて、自分がギフテッドと やっと気づいた私。

北海道では常識なのですが

 

ちょっと漢字多めのカタい記事になっちゃったんですけど…10年後は自分に関わることかもしれないと思ってお読みいただけるとありがたいです。

 

最近、愛知県知多半島エキノコックスが「既に定着したと考えられる」と発表されました。 

www.pref.aichi.jp

私のTwitterにはその関連のツイートがけっこうな頻度で流れてきますが、これはTwitterの特性で、「ワタシに」興味のあるニュースが流れてくるしくみになっているからです。 多分いまだに全くご存知ない方も多いと思う。

エキノコックスというもの自体を全く知らない人がいることに、北海道民は絶句するほど驚くのですが、そうですねぇ、そうなのかもねぇと思うしかなく…子供の頃から教えられて育つかどうかで変わりますね。

 

エキノコックス寄生虫による感染症です。

人から人への感染はありません。

動物(の排泄物)を介して人へ感染します。

 

北海道で最も警戒すべき野生動物はキタキツネ、野ネズミですが、それらに直接触れることはもちろん、排泄物の混入する可能性のある湧水、河川水を加熱しない生水で飲んだり水遊びする(水が口に入る)こと、また、それらの野生動物が入りこんだ家庭菜園などでの土いじりの後に手を洗わないことや収穫物を洗わずに生で食すこと、最近では住宅地にも野生動物が入りこむようになった結果、公園の砂場なども危険とされています。 屋外の水や土、植物にさわったらしっかりと手を洗う。

こういうことをかなり神経質に教えられます…少なくとも私の年代からは教えられてきました。 子供はとにかく「キツネにさわんな!そばに寄るな!ひどい病気になって死ぬんだぞ!」「山で土いじったら手ぇ洗え!」「(屋外で・遠足とかで)落としたものは絶対口に入れるな!」と言い聞かせられました。 子供らしく「何で?」と聞き返すことでエキノコックス(昔はエヒノコックスと言われてました)のことを教えられていきました。

 

もう40年近く昔ですが、山中を通る裏道でレンタカーの道外観光客(家族連れ)がキツネに餌やりしつつ子供にさわらせようとしてるのを見かけて思わず(相当に攻撃的な言葉で)怒鳴りつけて詰め寄ったことがあります。 

まぁそりゃさぞ驚かれたと思いますけど、(こっちにしてみれば餌やりも腹立たしいことだが当時は道民だってやってる人間は普通にいるほど野生とのかかわりのモラル認識は低かった)子供が尻尾にさわろうとしてるんだもの、とっさに怒鳴ってでも止めさせなきゃとアセった。 

排泄物からの感染ってことは、尻尾は汚染されてる可能性が最も高い部位なのです。 そもそも野生動物に咬まれたら相当厄介なことになるんだって認識もなくて、膝から崩れそうになるほど脱力した。 ドラマや映画の「カワイイ」だけが全てだと思ってる。

 

エキノコックスのことも全く知らなかったし「キツネにさわったら罹るんですか?」とか不満げに(怒鳴られたので不愉快だったんでしょうが:一応謝罪ととにかく制止目的だったと説明はした)聞くんで

「もちろん絶対に100%!ではないですよ、保有してないキツネもいますから。 でも保有率は40~50%という報告もあって、それは相当な高率です。」

「何が怖いって、感染してもずっと無症状です。 10年くらい経って自覚症状が出てくる。 その時は増殖した寄生虫に肝臓はじめ身体中が食い荒らされていて治療する術はありません。」

寄生虫は脳に入るケースもあるんですよ。 助からない。 ボロボロになって必ず死にます。 絶対にです。」

「早い段階で診断がつけば、なんとか助かる可能性もありますが、あなた方北海道の方ではないですよね。 あなた方の地域のドクターはエキノコックスについて多分知りません。 迅速な診断はつけられないと思います。 それは医師がヤブなわけじゃなく、10年前に北海道に行ってキツネにさわったなんて診察の時言わないでしょ? ていうことは診断できないのが普通。」

「延々苦しんだ挙句に診断がやっとついたときには手遅れ。 そもそも診断自体つかないかもしれない。 死んで病理解剖でやっと判るとか。」

「排泄物から感染するってことは、尻尾は汚染確率が高い。 その子が感染して発病して、20歳前後で苦しみ抜いて亡くなるかもしれない危険性を考えて下さい。」

 

「とりあえずこの山道抜けると○○って町があって公園があります。 水道でしっかり手を洗わせなさい。 そこに行くまでは絶対に手を顔や口に近づけないよう抑えるかタオルでグル巻きにしてガードしたほうがいい。 子供だから我慢できないでしょ。 使ったタオルは洗濯するまでもう使わないように。」

そこまで話して相手もさすがに神妙にはなったものの「じゃ、そこの川でまず手を洗ってきます」とか言うのでもうホントに…だぁーかぁーらぁぁぁぁ!!てな記憶がありましてねぇ。

 

近年は飼い犬を連れてキャンピングカーではるばるやってきたという方もよく見かけるようになってきて、懸念していた道内在住者は結構いたのです。 放さないでね、しっかりシャンプーしてね、キツネ見かけたらそばに寄らないでね、そういう話をどこまで理解してもらえているのか心配する声もありました。

 

怖さと歴史を知らないってのは、命を危険にさらす可能性がとんでもなく高まります。

愛知県はじめ国も本気で対策取る気が無いのか、対応が遅いと危惧するツイートが流れてくる中に、必要以上に恐怖をあおるなとか、北海道では管理がしっかりしているから感染は抑えられてるなどという、心配ないさー的な発言もあるようです。 

冗談じゃないです、その「管理」は相当数の犠牲の上で必要となってきたもの。

www.niid.go.jp

www.iph.pref.hokkaido.jp

 

そして今も新規感染者は出続けています。 

上記「北海道のエキノコックス症流行の歴史と行政の対策」(2019年)より

現在, 北海道では毎年400頭前後のキツネが解剖検査され, 毎年の新規患者数等の情報とともに公表されている。そこではこの20年にわたり, 北海道全域の40%前後のキツネが感染していること, また, 年間の本症の新規患者数が20人前後で推移していることが報告されている。 

 

現在、愛知県知多半島での報告にとどまっています。 まだこの段階なら根絶できる可能性があるんです。 というか、根絶させねば。

 

エキノコックスは北海道土着の寄生虫ではありませんでした。 毛皮目的で導入されたキツネから持ち込まれたと考えられていて、最初の感染地域は礼文島でした。

「島」という地域特性もあって終生宿主の排除により流行を終息させることができましたが、その後、道東地方で新規感染者が報告されました。 こちらも(確定はされていないのですが)持ち込まれたキツネが原因と考えられています。

 

この道東の感染は、1970年代までは道東の一部に限定されていたのですが、80年代になって拡大し、93年の全道調査によって全道への感染拡大が確認されました。

93年の調査で確認されたということは、おそらく80年代末にはほぼ全道に広がっていたと考えざるをえない。

 

北海道、広いんですよ。

hokkaidofan.com

この面積が10年で感染地域として拡大したわけです。 当時より交通状況やレジャーの様相がかわった現代、10年でもっと広範囲に広がると思います。 

それなりに対策は取られた北海道で、新規患者の感染爆発こそ抑えられたのですが、全域への感染拡大は抑えられなかったのです。

 

近年、野生動物が住宅地にまで入りこむことは珍しくなくなっています。 札幌も郊外なら夜に見かけることありますし、地方なら昼間でも普通に。 その結果起こること。

 

野生動物全般への接触禁止。 餌やりは絶対不可。

野犬、野良猫は基本全て駆除。 保護の際は検査の徹底。

川遊び、湖遊びは推奨されない。

山の湧水、沢水はどんなにきれいでもそのままでは飲めない。

山菜、キノコなどは完全に洗浄するか加熱処理必須。

家庭菜園の野菜はもいでそのまま食べるのは論外、基本しっかり洗浄する。

屋外で土砂や自然物にさわった手でそのまま飲食禁止。

犬、猫などペットの放し飼い禁忌。 散歩後、家に入る時には必ず足を洗う。 草むらに入らせない、入ったらしっかり洗い流す。

 

普段から野生動物の生息する環境に入りこむことが多い場合は、定期的に病院でエキノコックス感染検査(血液検査)を受ける。 感染初期であれば治療の術はあるので。

しつこいですが、自覚症状が出てからでは基本、助からない。

 

一応札幌市もこのように解説しています。 

www.city.sapporo.jp

対策も書かれていますが、これは北海道人ならば骨身にしみているので守ろうとするんですが、怖さを知らない人たちの耳に届くかどうか分からない。

 

初めて感染対策を採られた礼文島では、野犬はもちろん飼犬も飼猫もすべて殺処分され、その後20年以上、昭和45年まで犬も猫も飼うことが禁止されました。 

いくら昭和20年代とはいってもあまりにヒドイ!と言われるでしょうが、当時1万人ほどの島民のうち、認定されているだけで131名、実質はおそらく300名を越していただろうとされる死者をだした感染症を封じ込めるためにはそうするしかなかったことも理解はできます。

本当に、本当に現代においてもこの方策を取らねばならないような事態にだけはなってほしくありません。 

特に名古屋や岐阜の方々、どうか危機感を持って行政に強く働きかけて下さい。 個人のレベルでできることは限られています。 行政が対策を行うことが絶対必要。

当初に多大と思えるほどの経費をかけたとしても、拡大の前に封じ込めることができれば、結局は最小経費で済むというのはコロナウィルスで見てきたじゃないの。 

 

 

野生動物への関わり方は「カワイイ」が基本であってはならない…と思う。 せいぜい庭にバードテーブル置くくらいまでじゃないのかなぁ。